閉塞性動脈硬化症(PAD:peripheral arterial disease, ASO:atherosclerotic obliterans)とは下肢動脈が狭窄または閉塞することにより、下肢の虚血症状を生ずる疾患です。原因は、動脈硬化であるため、糖尿病、高血圧、高脂血症、喫煙される方に多く認められます。
近年、食生活の欧米化に伴い、この病気が増加しており、70歳以上の人では、30%弱に認められるとも報告されています。初期症状は、足の冷え、歩行時の下肢痛で、適切な診断・治療を行えば下肢自体の予後は良好ですが、重症化すると、足潰瘍、壊死と進行し、下肢切断に陥ります。また、下肢切断に及ぶと生命予後不良で、1年後の死亡率は50%にまで達します。
PAD患者さまは、全身の動脈硬化性疾患と合併することが多く、心筋梗塞や脳梗塞を生ずるリスクが高いです。また、逆に心筋梗塞や脳梗塞の患者さまも、高率にPADを合併していることが報告されています。


ABI測定器- 四肢の血圧を同時に測定できる自動血圧計(フォルム)で、上肢と下肢の血圧を測定します。下肢の血圧を上肢の血圧で除したものをABI(Ankle Brachial Index)といい、正常値は0.9から1.3です。0.9未満の場合PADが疑われ、1.4以上では動脈が極めて硬い可能性があり、以下のSPPなどの検査が必要です。ABIが異常な場合、画像診断により病変部位を特定します。

SPP測定器- 皮膚の毛細血管レベルの血流を測定します。糖尿病などで、高度に石灰化した動脈では、ABIが異常高値を示すことが知られています。SPPはこうした石灰化の有無にかかわらず、血流の状態を診断できる方法です。40mmHg以下が異常です。また、本法は傷の治り具合を知る方法として注目されています。30mmHg以下では、血流を改善しない限り、傷は治りません。

- 血管エコー、MDCT、MRAで病変部位を特定します。血管エコーは造影剤を使用しないため、体にやさしい検査です。当院では、まず、この検査により部位診断をします。血管の全体を見る場合は、MDCTやMRAを行いますが、この検査は造影剤が必要となります。従来、血管造影を行わないとわからなかった病変も、これらの検査でほとんど診断がつきます。
治療は、全身の動脈硬化に対する治療と下肢虚血症状に対する治療に分けられます。全身に対しては、基礎疾患の治療およびリスク管理が大切です。特に、高血圧、糖尿病、高脂血症の治療ならびに禁煙指導が主となります。
下肢虚血症状に対しては、薬物治療・運動療法から開始し、症状が改善しない場合や足に潰瘍・壊死を生じた重症虚血肢に対しては血行再建術を行います。
カテーテル治療とは、足の付け根の動脈(大腿動脈)、腕の動脈(上腕動脈)、膝の裏の動脈(膝窩動脈)から細い管(カテーテル)を入れて治療します。通常、先端に風船のついたカテーテル(バルーン)を細い針金(ガイドワイヤー)で病変部まで導き、風船を膨らませることで病変を拡張します。拡張が不十分な場合は、さらに金属のパイプ(ステント)を病変部に留置します。

- バイパスと異なり動脈自体を修復する(解剖学的修復)
- 侵襲度が低い
- 入院期間が短い(ほとんどが1泊2日)
- 高い初期成功率、低い合併症率(手技に関係する死亡はほとんどない)
- 繰り返し実施可能
しかし、病変部位によっては、バイパス術に比べ再発(再狭窄)率が高いことが問題となっています。現在、種々のカテーテル器具が開発されており、再狭窄の問題も解決する日が近いと思われます。
糖尿病合併症 最前線「シーズナルポスト 秋号」に、当院の循環器内科部長兼心臓血管センター長宮本明医師、看護師長藤井さつえ、コーディネーター奥山由美のインタビュー記事が掲載されました。
出典:「シーズナルポストVol.3 No.3」(監修・企画協力:糖尿病治療研究会)より許可を得て転載
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2012.05.09現在








